廃業の方法は一つではない

「もう会社を続けられないかもしれない」「社長である自分が破産するのだけは避けたい」――福岡の中小企業経営者の方から、そんなご相談を受ける機会が増えています。

実は、会社をたたむ(廃業する)方法は一つではなく、事業や財務の状況に応じて破産を回避できる選択肢も存在します。

本記事では、福岡を拠点とする弁護士が、廃業方法の典型的な4類型(Ⅰ~Ⅳ)を整理しながら、経営者保証ガイドラインなどを活用して破産を避ける方法を解説します。

※本記事で扱う「廃業」は、会社を法的に清算・整理することを指します。将来的に再開を予定して事業を一時停止する「休眠(休業)」とは異なります。

※経営者保証ガイドラインについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

会社が倒産しても社長は破産しないのか【福岡の弁護士が解説】

Ⅰ 資産超過の場合

法人:通常清算

個人(経営者):特になし

債務超過ではないので、社長個人が保証債務を履行する局面ではなく、破産も経営者保証ガイドラインの利用も不要です。

※個人の借入れがある場合には、別途検討します。

Ⅱ 債務超過だが事業に価値がある場合

パターン① 取引債務や法人公租公課(法人税、消費税、社会保険料等)の支払いが可能なとき

法人:価値のある事業について事業譲渡または会社分割➡残った旧会社は特別清算

個人(経営者):経営者保証ガイドラインに基づく債務整理

採算性のある事業(いわゆる「Good事業」)は別の会社に移し、残った旧会社は特別清算をします。社長個人は破産せずに、保証債務を交渉で整理する方法を検討します。

中小企業活性化協議会等の第三者機関を利用することが比較的多いです。

パターン② 取引債務や法人公租公課の支払いが困難なとき

法人:民事再生(民事再生法)

個人:経営者保証ガイドラインに基づく債務整理

法人が民事再生法で事業を立て直す一方、社長個人の保証債務は経営者保証ガイドラインによって整理し破産を回避する方法を検討します。

Ⅲ 債務超過かつ事業に価値がない場合

パターン① 取引債務や法人公租公課の支払いが可能なとき

法人:特別清算

個人:経営者保証ガイドラインに基づく債務整理

資産処分によって最低限の弁済が可能な場合、法人は特別清算で整理、社長個人は経営者保証ガイドラインにより破産を回避することを検討します。

実際に、文具店を営んでいた経営者の方が、特別清算と経営者保証ガイドラインによって破産せずに廃業できたケースもあります。

パターン② 取引債務や法人公租公課の支払いが困難なとき

法人:破産

個人:経営者保証ガイドラインに基づく債務整理

法人はやむなく破産となりますが、社長個人は経営者保証ガイドラインの利用により破産せずに済む可能性もあります。具体的な事例は次の記事で解説していますので、ご参照ください。

会社が倒産しても社長は破産しないのか【福岡の弁護士が解説】

Ⅳ いずれの手段も難しい場合

Ⅰ~Ⅲのいずれにも当てはまらない場合、社長個人も破産を選択せざるを得ません。

ただし、ここに至る前に早期に専門家へ相談することで、Ⅰ~Ⅲのいずれかを選択できるケースも多くあります。

どの類型に該当するか迷う方へ

「この4類型のどれに当てはまるかわからない」「事業価値の有無をどう判断するのか不安」――そうした段階でも、早めに相談することが何より重要です。

福岡の中小企業に寄り添ってきた当事務所では、経営者が破産せずに廃業を進めるためのサポートを行っています。まずはお気軽にご相談ください。

ご相談は無料です。こちらからお問い合わせください。