遺贈寄付とは
遺贈寄付は、「自分の遺産を社会のために使ってほしい」という想いを形にする手段として、今注目されています。
遺贈寄付とは、遺言によって財産の全部または一部を公益法人やNPO法人などに寄付することをいいます。
中でも、不動産や株式などを売却し現金化のうえ、必要に応じて債務を支払って残りの残額を寄付すること(清算型遺贈や換価遺贈と呼ばれます。)は、受け手にとって現金で受け取れるため、実務上現実的なものです。
2025年4月21日の日本経済新聞・夕刊でも「自分の遺産、社会のために 使途決める遺贈寄付広がる」と題して、制度の広がりとその背景が取り上げられました。
特に、子のいないご夫婦や単身の方などを中心に関心が広がっており、制度の理念だけでなく、どのように実務として成立させていくかが重要になっています。
遺贈寄付(清算型遺贈)の遺言執行を通じて見えた実務と備え
私は、遺言執行者として、遺贈寄付(清算型遺贈)を行いました。具体的には、預貯金・証券・動産(貴金属)・国内不動産・海外不動産(タイムシェア)を含む財産の換価処理を行い、相続人に生じた税負担の税務精算や、葬儀費用等の各種費用の支出を行いました。
以下、遺贈寄付(清算型遺贈)を実現するうえで重要だと感じた点を、実務経験を踏まえてご紹介します。
相続時の不動産売却は遺言執行者に任せると安心
相続人が不動産の換価手続きを行うと、売却交渉・契約手続などが必要となるため、大きな負担となることがあります。
この点、遺言執行者が実務を一括対応することで、法定相続人に大きな負担をかけずに済みます。加えて、不動産売却に日頃から関わっている弁護士等が関与すれば、相場をふまえた適正な価格での売却が可能となります。
私が担当した案件では、不動産業者4社から見積りを取り、交渉をして、適正な価格で不動産を売却することができました。
法定相続人の税負担への配慮を忘れずに
換価に伴う譲渡益により、公租公課に関して、法定相続人には以下のような負担が発生します。
- 所得税の発生
- 住民税の増額
- 介護保険料・国民健康保険料の増額
- 公的補助の減額又は資格喪失
遺贈寄付では、法定相続人にこのような負担が発生することを念頭に置いて、この負担にどのように対応するのかを考える必要があります。
私が担当した案件では、税理士と連携して納税額を算出し、相続人に生じた納税負担を遺産から支出するかたちで精算しました。
遺言に明記はありませんでしたが、遺贈を実行するための費用と合理的に解釈して精算を行ったものです。
タイムシェア・海外不動産は「負の遺産」になる前に生前処分を
タイムシェアを含む海外不動産をお持ちの方もいらっしゃると思います。
海外不動産(特にアメリカ)には、
- 毎年高額な管理費が継続する(タイムシェアの場合)
- 解約や譲渡の手続きが複雑
- プロベート手続のために長期間かかる
- プロベート手続等のために海外専門家(弁護士や税理士等)費用がかかる
- 譲渡して源泉税を納めた場合には還付がされることがあるが、申告後還付がされるまでに長期間かかる
という特性があり、法定相続人にとって深刻な「負の遺産」となりえます。海外不動産は、生前に処分しておくことが望ましいと強く感じます。
※プロベートとは、アメリカなどで相続財産の分配を行うために、遺産の確定、負債の弁済、相続人への分配などを裁判所の監督のもとで行う手続です。日本にはない制度で、手続完了までに数年かかることもあります。
私が担当した案件では、時間はかかりましたが、管理費を精算し、海外不動産(タイムシェア)を売却することができました。
日常的な債務を見落とさない
清算型遺贈では、換価して得られた資産から遺贈者の負担する一切の債務を精算して残額を寄付することになります。負担する一切の債務には、日常的に支払う債務も含まれます。
ところが、日常的に支払う債務として何があるのかが遺された者にとって分からないことがあります。そこで、日常的に支払う債務として何があるかをエンディングノート等でまとめておくと、気づかれずに放置されるリスクを減らせると思います。
遺贈寄付(清算型遺贈)を円滑に行うための備え
実務経験から重要だと感じた備えは次の4点です:
- 不動産処分を見据えた遺言の設計
- 税金や保険料の精算を遺産から支出できるようにすること
- 特殊清掃費や葬儀費用も支出対象とする設計
- 実務処理に慣れた遺言執行者の選任
ご相談をご希望の方へ【福岡・全国対応】
〜想いを社会につなぐ遺贈寄付の実現をサポートします〜
私はこれまで、福岡を拠点にして、遺言執行者として以下のような対応を行ってきました。
- 預貯金・有価証券・動産(貴金属等)・国内不動産の売却
- 海外不動産(タイムシェア)の売却、管理費精算
- 海外専門家(弁護士、税理士等)との連携
- 国内税理士との連携による相続人の納税額の算出と精算
- 葬儀費用等死後に発生する各種費用への対応
特に、不動産や動産を処分したうえで寄付する換価遺贈を行うケース、相続人の納税負担を精算するケース、海外資産が絡むケースでは、一定の専門的準備と実務対応が求められます。
ご事情に応じて、丁寧にお話を伺いながら対応しております。
福岡で遺贈寄付についてご検討されている方やお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
また、福岡を拠点に活動しておりますが、全国からのご相談にも対応しておりますので、福岡以外の方もご遠慮なくご相談ください。
▶ ご相談・お問い合わせはこちら https://onizuka.law/contact/